全粒紛なら普通の小麦粉よりグルテンは少ないと思っていませんか?
私も、グルテンを減らせるという思い込みで、パン屋さんで全粒粉のパンを買っていたことがあります。
実は、全粒紛にもグルテンはしっかり含まれています。
全粒紛は栄養価が高いものの、グルテンを減らせる食品ではありません。
この記事では、グルテンを控えたい人にとって全粒粉を選べばグルテンは減らせるのか、小麦粉と全粒粉の違い、全粒粉の栄養価とメリット、グルテンを控えたい人は何を選ぶべきかを解説していきます。
全粒粉を選べばグルテンが減る?

全粒粉を選んだからといって、グルテンが減るわけではありません。
つまり、全粒粉は普通の小麦粉と原料は同じ小麦なので、当然グルテンも含まれています。
小麦の構造

小麦は、上の図のように表皮(ふすま)、胚芽、胚乳と呼ばれる3つの部位で構成されています。
それぞれの部位の占める割合や含まれる栄養素は、下の表の通りです。
| 部位 | 割合 | 主な栄養 |
|---|---|---|
| 表皮 | 約15% | 食物繊維・ミネラル |
| 胚芽 | 約2% | ビタミンB群・ビタミンE・ミネラル・脂質 |
| 胚乳 | 約84% | 糖質・たんぱく質 |
表皮はふすまやブランなどとも呼ばれており、小麦の最も外側を覆う部分で小麦粒全体の約15%を占めます。
食物繊維をはじめ、鉄やマグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。
胚芽は新しい芽となる部分で、小麦粒全体の約2%を占めます。
ビタミンB群やビタミンE、ミネラル、良質な脂質など、小麦が発芽、成長するために必要な栄養が凝縮されています。
胚乳は小麦粒全体の約83%を占める最も大きな部分です。
主な成分は糖質(でんぷん)、たんぱく質で、パンや麺の原料となる小麦粉の中心部分です。
全粒粉と小麦粉の違い
全粒粉と小麦粉は、どちらも同じ小麦を原料としています。
大きく違うのは、小麦のどの部位を使って製粉するかということです。
全粒粉は、小麦の表皮・胚芽・胚乳を丸ごと製粉して作られます。
一方、一般的な小麦粉は、表皮と胚芽を取り除き、胚乳だけを製粉して作られます。
そのため、全粒粉は表皮や胚芽に含まれる食物繊維やビタミン、ミネラルを多く含み、香ばしい風味やしっかりとした食感が特徴です。
一方、小麦粉は胚乳のみを使用するため、白っぽい色でくせが少なく、ふんわりとした食感に仕上がります。
| 全粒粉 | 小麦粉 | |
|---|---|---|
| 使用する部位 | 表皮・胚芽・胚乳 | 胚乳のみ |
| 色合い | 茶褐色 | 白っぽい色 |
| 食物繊維 | 多い | 少ない |
| ビタミン ミネラル | 多い | 少ない |
| 風味 | 香ばしい風味 | くせが少ない |
| グルテン | あり | あり |
ここで注目したいのは、どちらもグルテンを含んでいるという点です。
グルテンのもとになるグリアジンとグルテニンは、どちらも胚乳に含まれており、水を加えてこねることでグルテンを形成します。
そのため、胚乳を含む全粒粉にも小麦粉にもグルテンは含まれています。
つまり、全粒粉と小麦粉の違いはグルテンのある胚乳の有無ではなく、表皮や胚芽を含むかどうかです。
この違いによって、栄養価や風味、食感などに違いが生まれます。
なぜ全粒粉はグルテンが少ないと誤解されるのか?

全粒粉は、表皮や胚芽を含めて製粉しているため、一般的な小麦粉のパンより膨らみにくく、ふんわり感が出にくいという特徴があります。
その特徴から「グルテンが少ないからでは?」と思ってしまいます。
実際のところ、グルテン含有量はどうなのでしょうか。
残念ながら、グルテンそのものの量を比較した公的データはほとんどありません。
しかし、グルテンのもとになるたんぱく質量をみると、全粒紛のたんぱく質量は100g当たり12.8gで強力粉(1等粉11.8g、2等粉12.6g)です。(日本食品標準成分表(文部科学省・八訂増補2023年))
全粒粉と強力粉には大きな差がないことがわかります。
全粒紛100%であれば、グルテンが少ないとはいえないのです。
では、なぜ全粒紛はグルテンを含んでいるのにパン生地は膨らみにくく、ふんわり感が少ないのでしょうか。
ここで混同されやすいのが、グルテンの量とパンの膨らみやすさは同じではないということです。
パンがふんわり膨らむためには、パン生地の中でグルテンが網目状の構造を作り、発酵によって発生したガスをしっかり閉じ込める必要があります
イメージすると、グルテンは風船を包むネットのような役割をしています。
ネットがきれいに広がれば風船は大きく膨らみますが、ネットに細かいものが絡みついていたりすると、うまく広がることができません。
全粒粉には表皮や胚芽が含まれているため、これらがグルテンの網目構造の形成を妨げます。
その結果、グルテンを作るたんぱく質は十分に含まれているのに、網目構造がきれいに作れず、発酵で生じたガスを保持しにくくなるのです。
つまり、全粒粉はグルテンが十分に働きにくいから膨らみにくいというのが正解です。
全粒粉と小麦粉の違いを栄養価・風味・食感で比較

全粒粉と小麦粉は同じ小麦が原料ですが、栄養価や風味、食感に違いがあります。
栄養価と風味・食感の2つのポイントをみていきます。
栄養価
全粒粉が健康的な食品といわれる一番の理由は、表皮や胚芽の食物繊維やビタミン、ミネラルが取り除かれず残っているためです。
実際に、小麦粉の強力粉1等とどのくらい違うのか、成分表をもとに比較してみましょう。
| 全粒粉 (強力粉) | 小麦粉 強力粉1等) | |
|---|---|---|
| エネルギー(kcal) | 320 | 337 |
| たんぱく質(g) | 12.8 | 11.8 |
| 食物繊維総量(g) | 11.2 | 2.7 |
| ビタミンB1(㎎) | 0.34 | 0.09 |
| ビタミンB2(㎎) | 0.09 | 0.04 |
| ビタミンB6(㎎) | 0.33 | 0.06 |
| カリウム(㎎) | 330 | 89 |
| マグネシウム(㎎) | 140 | 23 |
| 鉄(㎎) | 3.1 | 0.9 |
| 亜鉛(㎎) | 3.0 | 0.8 |
※日本食品標準成分表(文部科学省・八訂増補2023年)を参考に作成
表を見ると、エネルギーやたんぱく質に大きな違いはありませんが、食物繊維やビタミンB群、鉄やマグネシウムなどのミネラルは全粒紛の方が豊富に含まれていることがわかります。
特に注目したいのが食物繊維です。
小麦粉の約4倍含まれており、健康的な食品といわれる理由の一つになっています。
食物繊維には腸内環境を整えるほか、食後の血糖値の急上昇をゆるやかにしたり、コレステロール値の改善をサポートする働きが期待されています。
ビタミンB群は生体内でエネルギーを作るために欠かせない栄養素です。
糖質や脂質、たんぱく質の代謝を助ける働きがあり、毎日の健康維持に重要な役割を果たしています。
また、ミネラルは骨や血液の材料になるほか、体のさまざまな機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。
ただし、全粒紛だから健康になるというわけではありません。
小麦製品であるため、食べ過ぎれはエネルギーや糖質の取りすぎにつながります。
健康的な生活の一部として、適量を取り入れることが大切です。
風味・食感
小麦をまるごと粉にしている全粒紛は、小麦の風味が豊かで香ばしく、ほんのりとした苦みもあります。
パン生地の膨らみが小麦と比べて控えめになったり、全粒紛の茶褐色の色合いはそのままパンやクッキーの見た目にも影響します。
最近ではカフェやべーカリーで使われることもあり、健康的なイメージだけでなく、ナチュラルな雰囲気でおしゃれな見た目も人気があります。
素材の味を生かし、お菓子作りの際はバターや砂糖を控えめにしたり、噛み応えや独特の食感や味わいにより満足感を得やすかったりします。
全粒紛を使用した食品はハードな食感に仕上がるため、硬めのハードなパンがお好みの方や小麦本来の風味を楽しみたい方におすすめです。
一方、小麦粉は全粒紛と比べるとクセがないため、幅広い料理に活用できます。
粉の色は白っぽいため、仕上がりもきれいになります。
小麦粉で作る生地はソフトな食感になりやすいため、ふんわりとしたパンやスポンジケーキを作る場合などに適しています。
全粒紛はどんな人におすすめ?

全粒粉はグルテンフリー食品ではありません。
しかし、健康的な食生活を送りたい方や小麦本来の風味を楽しみたいという方にはおすすめできる食材です。
全粒粉がおすすめの方はこんな方です。
● 食物繊維を積極的に摂りたい
● ビタミンやミネラルも一緒に補いたい
● 香ばしい風味や噛み応えのあるパンが好き
一方で、全粒粉はおすすめできない方はこんな方です。
● グルテンを控えたい
● グルテンフリーの食生活を実践している
● 小麦アレルギーがある
● セリアック病など、グルテンを避ける必要がある
「全粒粉=体に良い食品」というイメージだけで選んでしまうと、食材を選ぶ目的とずれてしまうことがあります。
食物繊維やビタミン、ミネラルを効率よく摂りたいなら、全粒粉は選択肢の一つになるでしょう。
しかし、「グルテンを減らしたい」、「グルテンフリーの食生活を送りたい」という目的であれば、小麦を使用していない食品を選ぶ必要があります。
つまり、全粒粉が健康的な食品であることと、グルテンフリーであることは別の話です。
実際に、市販の商品を選ぶ際にも少し注意が必要です。
「全粒粉パン」や「全粒粉入り」と表示されていても、全粒粉100%の商品は多くありません。
多くは小麦粉を主原料とし、その一部に全粒粉を配合した商品です。
また、「全粒粉入り」という表示だけでは、どれくらい全粒粉が使われているかは分からない場合もあります。
健康目的で選ぶのであれば、原材料表示を確認し、全粒粉がどの程度使われているかや商品によっては配合割合も参考にするとよいでしょう。
グルテンを控えたい人は何を選ぶべき?

グルテンを控えることを目的にするなら、全粒粉ではなく小麦以外を原料としたグルテンフリー食品を選ぶ必要があります。
おすすめのグルテンフリー食品は米粉、とうもろこし粉、そば粉、タピオカ粉などがあります。
これらは小麦粉を使用していないため、グルテンを含みません。
米粉
米粉は、お米を細かく粉にした食材でクセが少なく使いやすい食材です。
最近は、どこのスーパーでもほとんど取り扱いがあり、米粉の商品も増えているため、手に取りやすくなっています。
米粉パンや米粉麺、クッキー、ケーキ、料理のとろみ付け、唐揚げの衣など小麦粉の代わりとして幅広く活用できます。
米粉の主成分は炭水化物(糖質)で体や脳を動かすための大切なエネルギー源となります。
たんぱく質は少量含まれていますが、グルテンを作る性質はありません。
そのため、米粉だけではパンは膨らみにくく、製パン用の米粉や増粘剤などを活用することで、ふんわりとしたパンが作れる商品も増えています。
しかし、店頭では商品名が米粉パンとなっていても、小麦粉や小麦たんぱくが配合されているものがあり、原料表示の確認が必要です。
とうもろこし粉
とうもろこし粉は、乾燥したとうもろこしを粉砕したもので香ばしさや自然な甘みが特徴です。
とうもろこし由来のエネルギー源として摂取できるほか、ビタミン類やミネラル、食物繊維も含まれています。
メキシコ料理のトルティーヤやタコスなどに使われている食材です。
しかし、市販の商品はフラワートルティーヤという小麦粉を使っている食材も多く、とうもろこし原料のマサ粉のみで作られているものは市販では珍しいです。
他にも、とうもろこし粉はコーンポタージュのベースやシチューのとろみ付けなどの料理やお菓子にも活用できる食材です。
そば粉
そば粉は、そばの実を粉にしたもので、食物繊維が豊富でビタミンB1、B2、ルチン(ポリフェノールの一種)などの栄養素がバランス良く含まれています。
小麦粉を使用していない『十割そば』はグルテンフリーですが、市販のそばには『二八そば』のように小麦粉をつなぎとして混ぜて作られていることが多いため、原材料表示のチェックが必要です。
他にそば粉を使った料理にはフランスの郷土料理のガレット、京都の伝統菓子のそばぼうろがありますが、小麦粉を混ぜて作られているものがあるので、グルテンフリー食の方はこちらも原材料表示のチェックが必要です。
タピオカ粉
タピオカ粉はキャッサバという芋の根茎からとったでん粉です。
タピオカミルクティーで知られている『ブラックパールタピオカ』もタピオカ粉をもとに作られています。
主成分はでんぷん(糖質)のため、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどはほとんど含まれていません。
ポンデケージョというもちもちしたパンはタピオカ粉とチーズで作られています。
ほかにもビーフンやタイ料理のパッタイなどの麺は米粉だけではべたついて扱いづらいこともあり、タピオカ粉が配合されているものもあります。
他にも片栗粉や大豆粉、キヌア粉など様々な食材があり、用途に合わせて使い分けることで小麦と変わらない食事が楽しめたり、新たな食感や風味を発見するなど十分に楽しむことができます。
よくある質問 Q&A
Q.ふすまパンって、グルテンフリーですか?
A.いいえ。ふすまパンはほとんどの場合、グルテンフリーではありません。
ふすまは小麦の表皮の部分で、この部位にはグルテンを含みません。
しかし、小麦の粒からふすまを取り出す工程で、胚乳も少量付着してしまうためグルテンが混ざります。
また、一般的なふすまパンはパンらしいふくらみを出すために、小麦粉や小麦グルテンを使って作られていることが多く、グルテンフリーではありません。
Q.全粒粉パンとライ麦パンだとどっちがいい?
A.どちらも栄養豊富ですが、目的に応じて異なります。
全粒粉のパンはライ麦パンよりも糖質が少なめなので、糖質を控えたい方や血糖コントロールしたい方に向いています。
ライ麦パンは小麦と比べて食物繊維が非常に豊富(小麦全粒紛の約2倍)で、ビタミンや鉄分が多くふくまれています。
そのため、腸内環境整えて便通を良くしたい、鉄分などのミネラル補給を期待する方に向いています。
しかし、市販のパンは小麦粉をメインに少しだけ全粒紛やライ麦が配合されている場合が多いので、購入時は原材料の配合比率や栄養成分表示をチェックするのがおすすめです。
Q.全粒粉と米粉どちらが健康ですか?
A.目的に応じて異なります。
栄養価を重視するなら全粒粉、グルテンを避けたいなら米粉がおすすめです。
まとめ
全粒粉なら普通の小麦よりグルテンが少ないと思われがちですが、実際はグルテンがしっかり含まれています。
パンが膨らみにくいためグルテンが少ないように感じますが、これはグルテンの量ではなく、表皮や胚芽がグルテンの働きを妨げることにあります。
一方で、全粒紛は食物繊維やビタミン、ミネラルを豊富に含む栄養価の高い食品です。
そのため、健康的な食生活を意識する方にはおすすめですが、グルテン控えたい方には適していません。
健康のために全粒紛をえらぶのか、グルテンを控えるために全粒紛を含む小麦を避けるのか、目的に合わせて食品を選ぶことが大切です。

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